はじめに
NPB、MLBが今年も盛り上がっている。
NPBに目を向ければ、個人的に阪神タイガース在籍の佐藤輝明選手の活躍が目に付く。
「左のアーチスト」っぷりを発揮し、この記事を書いている時点で以下の成績を残している。
- 打率 .277
- ホームラン 11(リーグ1位)
- 打点 36(リーグ1位)
昨シーズン16本塁打を記録しているが、今シーズンすでに11本。自己最多の記録を塗り替える可能性も大いにある。
また、同じく阪神タイガース在籍の森下選手が打率で1位に君臨しており、チームは現在リーグ1位である。戦力の厚さで巨人の1人勝ちと思われたが期待を裏切ってくれている。
一方のMLBはというと、個人的にMLB1年目の菅野選手に注目していたが、素晴らしい結果を残している。一部記事では、すでに「オリオールズのエース」と言われるほどだ。
打者では、鈴木誠也選手が長打率.503を記録しており、シーズンを追うごとに目を見張る活躍が目立ってきた。
大谷選手は、多くのメディアが報じる通りの活躍をしている。。。
では、本題に移る。
MLBファンとしては、NPBからMLBへ移籍する選手にいつも注目している。
今シーズンの場合、菅野選手や小笠原選手、青柳選手だ。
どの選手が移籍するかというのを、例年の成績や本人のコメントをもとに目を光らせるのだが、三冠王・村上宗隆選手が今シーズンポスティングでMLB挑戦を公言している。
ただ、それ以上に注目している選手がいる。
西武埼玉ライオンズ在籍の今井達也選手だ。
今井選手はMLB移籍希望を公言したことはないが、今パリーグで「敵なし」状態だ。
パ・リーグで無双中である。加えて、MLBスカウトからも注目されていることを考えると、MLB移籍が有力ではないかと考えるのが自然ではないだろうか。
では、もう少し詳細を書いていく。
なぜ移籍が有力視されるか
先に、結論から述べておくと、なぜ移籍が有力視されるかと言えば、今井選手が打者を支配しているからだ。
繰り返しにはなるが、今井選手はMLB移籍を公言していない。
彼は、記者陣に過去、MLB移籍があるのか聞かれた際こうコメントしている。
今は日本のプロ野球でまず一番を目指すことだけを考えてやってます
ここで言う「一番」とは、チームの優勝というよりも、投手としての一番、つまり沢村賞を指すのではないかと思っている。なぜなら、この発言は自身初のタイトル(奪三振王)を獲得した後のコメントだからだ。
そのシーズンに最も優れた投手に贈られる「沢村賞」。2024年シーズンは、沢村賞該当なしと、2019年以来のこととなった。
奪三振王とはなったものの、他の評価基準において、まだ1位ではないと認識しているのだろう。
では、過去5年の沢村賞投手を紹介する。
- 2020 大野雄大
- 2021 山本由伸
- 2022 山本由伸
- 2023 山本由伸
- 2024 該当者なし
際立つのは山本由伸選手だ。
3年連続沢村賞受賞の肩書きを引っ提げて海を渡り、今シーズン今のところシーズン防御率は1位にランクインしている。
渡米前の山本選手は、まさに敵なし状態。
勝敗は打者の援護に左右されるため、防御率とWHIP(1イニングあたりに許した出塁数 平均が1.20~1.40)が以下だ。

つまり、登板した試合のほとんどで失点数が2以下、登板したイニングで打者1人を出すか出さないか、という極めて支配的な投球術を披露していたのがわかる。
では、今シーズンの今井選手はというと、以下の成績だ。

もちろん山本選手のシーズン成績と今井選手のシーズン途中の成績を比べるのはフェアではない。
しかし、敵なし状態であることに変わりはない。
この記事を書いている2025年5月11時点で、22イニング連続無失点を継続している。
日本でこれだけ圧倒的な成績を残すと、「MLB移籍」が現実味を増してくるのだ。
投球スタイル
では、その支配的投球を続ける今井選手の投球スタイルはどのようなものか。
今井選手は、いわゆるパワーピッチャーである。
パワーピッチャーとは、直球とスライダーをメインに駆使し、奪三振を奪う投手を指す。昨年奪三振王に輝いたのもパワーピッチャーたる投球スタイルのおかげであるのではないだろうか。
個人的に今井選手が投手として本当にすごいと思うのは、投球フォームの変化だ。
下の動画をご覧いただきたい。
これまで数多くの投手たちの投球フォームを「コピー」してきた。
それには、プロ入り後投球フォームを固めることができていなかったことが背景にある。
しかしながら、これだけフォームを変えても150km超えの直球を投げられるその投手としての素質というか出力の高さというかはポテンシャルの高さの証拠だ。
これまで、言ってしまえば「コピー」だった投球フォームが今シーズンから一変。唯一無二の投球フォームだ。
まるでキャッチボールをするかの如く脱力したフォームである。ただ、リリースの時に出力を上げているのだろうか、球のキレがすごい。日本ハムの打者をバッタバッタと抑えている。
体に合った投球フォームを目指し、この投球フォームにたどり着いたようだ。
移籍に伴う懸念点
ここまでその打者を圧倒する投球に目を向けてきたが、生憎懸念点もある。
それが球数の多さ、もっというと四球の多さだ。
今井選手は2018年からプロ野球選手としてのキャリアがあり、今年で8年目。
8年のキャリアで「与四球王」に3度輝いている。昨年は奪三振王のタイトルを獲得したものの、同時に与えた四球が70個、与四球王となっている。
例えば、5月3日と5月10日の登板時の投球内容は以下である。
5月3日
- イニング数:7
- 球数:119
- 被安打:4
- 奪三振:10
- 四球:3
- 死球:1
- 失点:0
5月10日
- イニング数:7
- 球数:114
- 被安打:3
- 奪三振:10
- 四球:0
- 死球:0
- 失点:0
いずれの登板も110球以上を投げている。特に5月10日の登板は、四死球が0にもかかわらず、球数が114を数える。
一般にパワーピッチャーは球数が多くなるが、ことMLBで、となると話が変わってくる。なぜなら試合スケジュールがかなりタイトであるからだ。
中4日での登板が求められることは有名な話。ゆえに、投手にはクオリティスタート(以下QS)やハイクオリティスタート(以下HQS)が求められる。
QSとは、6イニング以上3失点以内、HQSとは7イニング以上2失点以内を指す。
いずれの登板もHQSを達成しているが、もしこれがMLBだったら6イニングを投げ終えたところで降板だっただろう。
省エネ投球が中4日の登板で求められ、シーズンフルで投げ抜くと約30~33登板となる。
もちろん、これまでフォームがハマらず、フォームの模索をしていたため四球数が多かったことも頷けるが、今シーズン、もしくは来シーズンの成績が良化すればMLB複数球団の獲得の的となることは間違いない。
さいごに
以上、今のNPBからMLB移籍が有力視される今井投手に関する情報をまとめた。
ここまで書いておきながら移籍に関しては推察だ。
過去巨人の坂本選手やソフトバンクの柳田選手もMLB移籍が囁かれながら、NPBで野球人生を終えると決断した。
ただ個人的に敵なし状態にある選手は、海を渡って「野球選手」というキャリアをブラッシュアップした方がいいと思っている。
結果その選手にとっても、ファンにとってもその活躍にワクワクする。
今井選手はどう決断するのだろうか。とても楽しみである。
コメント