はじめに
遅かれ早かれ、元千葉ロッテマリーンズ、佐々木朗希選手のMLB移籍は確実だった。
常々海を渡ることをメディアに公言していたこともそうだが、MLBのスカウトが視察に来ていたことも事実。あとは時間の問題だった。
そして2025年1月18日、ついに「佐々木朗希移籍」のニュースが飛び込んできた。
気になる移籍先のチームは、ドジャース。
大谷翔平、山本由伸に次ぐ3人目の日本人右腕がチームに加わる。

そこでこの記事では、今一度佐々木朗希選手の移籍に関する事やMLB活躍予想などを記していく。
佐々木朗希選手の移籍に伴い立ちはだかった障壁
繰り返しになるが、元千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手がロサンゼルス・ドジャースに移籍することが決定した。
最速165kmを誇る速球と、150kmに迫るフォークで打者を翻弄する。日本、かつ世界記録である13者連続奪三振記録者であり、2022年には史上最年少で完全試合を達成した。
ただ、今回移籍が決まったことに変わりはないが、大谷翔平や山本由伸とは違う。
複雑な話だが、佐々木選手の契約はメジャー契約ではなく、マイナー契約なのだ。そこには「25歳ルール」という壁が立ちはだかっている。
「25歳ルール」とは?
佐々木朗希選手がメジャー契約ではなく、マイナー契約となった背景に「25歳ルール」というものがある。
そしてその25歳ルールとは、
「メジャーのチームが25歳未満の選手、もしくはプロ6年未満の選手を獲得する際に、契約金や年俸の制限をする。またマイナー契約しかできない」というものだ。
契約発表があった時点で佐々木選手は23歳。
つまりこの「25歳ルール」の対象が故に、マイナー契約となった。こういう背景もあり、25歳以上でメジャー移籍をすることがほとんどだ。なぜなら、個人的にも、また元々在籍していたチームにも金銭面での恩恵があるからだ。
大谷翔平選手もこの25歳ルールにぶつかっていた。
日本ハム在籍最終年、大谷選手の年俸が推定2.7億円。移籍後1年目の年俸は約6,700万円とされている。いずれにしても大金であることに間違いはないが、MLBでの二刀流での活躍を見ればもっと評価されていてもおかしくなかった。
では、そもそもなぜこの「25歳ルール」と呼ばれるものが存在するのかを解説する。
なぜ25歳ルールが存在するのか
結論、各チームのパワーバランスを均等に保つためである。
MLBを見る方はご存知だろうが、MLBはさまざまな国籍を持つ選手が数多くいる。故に、強いチームを築くために世界中に潜む有望選手の獲得に血眼だ。
例えば大谷選手2世と呼ばれる存在が日本に生まれたとする。
その際、獲得の可能性が高いチームはどこだろうか。答えは資金力が豊富なチームだ。マイナー契約であっても選手にとって、コーチ陣、練習環境、年俸など条件の良いチームを選ぶのは間違いない。
つまり、資金力のあるチームが世界中の有望選手を買い漁ることを避け、どのチームと契約したとしても年俸の制限が決まっているのだ。
有望選手を買い漁らない、ここまでがMLB側事情。では選手事情となると、話がややこしくなる。
多くの選手にとって、条件の良さは捨てきれない。それが仮に貧しかったらなおさらだ。
日本は世界で見ても豊かである。1軍で活躍した選手は「1億円の大台」を超えることも多い。その一方で他国はどうか?
MLBに多く在籍している中南米の選手は、野球に限らず生活水準が日本ほど高くない。
言うなれば「アメリカンドリーム」を叶えるのに必死なのだ。そしてその夢を叶えるために練習に励むのはもちろんだが、禁止薬物の使用に手が伸びることも珍しくない。ホームラン王にも輝いたフェルナンド・タティス・Jr選手もその一人だ。
多くのチームに、「公平さ」が求められている。25歳以下の国際選手を獲得する際は条件に大差をつけず、育成重視で獲得。結果を残し、大型契約を狙うというのが大筋のようだ。
佐々木選手の価値は?
では、25歳ルールの対象である佐々木選手は、即戦力なのか。はたまた育成重視での契約なのか。
個人的には、後者だと思っている。なぜなら先発投手としての実績に欠けているためだ。
昨年、山本由伸選手がポスティング制度を使用してロサンゼルス・ドジャースに移籍した。彼は移籍前さまざまなタイトルを獲得している。
- 最多勝利(2021~2023年)
- 最優秀防御率(2019、2021~2023年)
- 最多奪三振(2020~2023年)
- 最高勝率(2021~2023年)
- 沢村賞(2021~2023年)
いわば、日本に敵なし状態だった。
2021年投手四冠(最優秀防御率、最高勝率、最多勝利、最多奪三振)を令和で初めて達成し、その後2年間も同じく四冠に輝いている。在籍していたオリックス・バファローズも優勝にも導き、誰しもが納得するMLB移籍だった。
では、佐々木選手はというと、言葉を選ばずいうと、明らかに劣る。下の画像は日本在籍時の実績だ。

タイトル獲得はなく、また怪我・故障によるチーム離脱も多い。数字に目を向ければ奪三振能力の高さやWHIPの低さには目を見張る。
一方で、特にMLBで求められる先発投手としての活躍ができているかどうかでいうと、これまでの実績だけでいうと、答えはNOだ。故に即戦力ではなく、育成重視も兼ねた獲得だと踏んでいる。
先発としてフル回転は可能か?
先に断っておくと、決してアンチ・佐々木選手ではない。1ファンとしてMLBで活躍してほしいと思っている一方で、つい首を傾げてしまう点があるのだ。
個人的に、育成重視の獲得だと先に述べた。なぜなら先発投手としての実績が不十分であることが1つ。そしてもう1つは、MLBで先発投手に求められることの1つ、イニング数を稼いでもらうためだ。
MLBは試合数が162。選手枠は40人枠で、ベンチ入りは26人という決まりがある。何が言いたいかというと、長いシーズンを少ない人数で戦い抜く必要があるということ。そこで重要視されるのが役割を全うすることだ。
例えば、先発投手に求められるのは「イニングを投げること」だと思っている。
MLBではイニングイーターという表現があるのだが、これはたくさんのイニングを投げる投手のことを意味している。MLBに在籍していた日本人でイニングイーターと呼べるのは、黒田博樹投手が筆頭だろうか。
計7シーズンMLBに在籍し、うち6シーズンで31先発以上をこなし、規定投球回の達成をしている。サイ・ヤング賞や最多勝、最優秀防御率のタイトルを獲得したわけではないがケガなく安定して「先発投手の役割」を全うした。
話を佐々木投手に戻す。
即戦力として、言い方を変えると、イニングイーターとしてMLBの長いシーズンを今戦い抜けるだろうか?生憎答えはYESではない気がしてしまう。高いポテンシャルを持っているのは間違いなく、ドジャースは佐々木投手を育成重視で獲得したのではないかと推察している。
そこで考えられるのが、1年目の先発数、もしくは投球回数を決めること。
MLB挑戦1年目の日本人選手は、フォーム変更する場面が度々見られる。ダルビッシュ有投手は右足の使い方、山本投手は構える際の手の置き方、大谷選手はノンステップに打法を変えている。
そしておそらく佐々木投手も例外ではない。
彼の足を高く上げるフォームは腰への負担が多い。同じくドジャースのサイ・ヤング賞受賞左腕、クレイトン・カーショー投手も近年毎年怪我で離脱している。
MLBの固いとされるマウンドへの適応や長いシーズンによる身体疲労も加味し、制限を設けた上で投球機会を設けられるのではないだろうか。
そのポテンシャルの高さゆえに、マイナー契約はもったいない。
その一方で、マイナー契約だからこそ初年はアメリカ野球に慣れ、かつ指摘されている身体の線の細さを克服できるとも取れる。おまけに同じチーム内に先輩日本人が在籍していることも精神的支えだ。日本人初のサイ・ヤング賞受賞も決して夢ではない。
さいごに
以上、個人的推察を含め佐々木朗希選手のMLB移籍に関して述べた。
直近のMLBニュースは大谷選手活躍が際立ちすぎて、メディアはこぞって「大谷、〇〇」ばかりだ。鈴木誠也選手が日本人右打者史上初の2年連続20本以上本塁打を打ったニュースは隅っこに追いやられている・・・
しかし、その大谷選手と同様の注目を集めるのが佐々木選手の可能性がある。
未だ長いMLBの歴史でサイ・ヤング賞を受賞した日本人選手はいない。大谷選手と違い、投手一本でMLB挑戦することもそうだが、そのポテンシャルがわかっている分つい期待してしまう。
来シーズンもMLBから目が離せない。
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