【読了】世界でも話題の「BUTTER」・「ババヤガの夜」の感想

BUTTER ババヤガの夜
目次

はじめに

本屋に脚を運ぶ方は、この2冊を見たのは間違いないでしょう。
柚木麻子さんの「BUTTER」と王谷晶さんの「ババヤガの夜」です。

まず、「 BUTTER」がイギリスにて賞を3つ獲得。
次に、「ババヤガの夜」がこちらもイギリスにおいて世界最高峰のミステリー賞とされる、ダガー賞を受賞しました。

あまりにも多くの書店で見かけるため、この2冊を手に取った、というのが経緯です。

そして、当方、2冊とも読了しました。
肝心の内容なんですが、面白い。さすがと言うべきでしょうか、やはり文字でその情景を浮かばせるのが非常に上手。

タイトルにもある通り、「BUTTER」の中で描かれるバターはそそられます。

簡単に本書のレビューを行います。

BUTTER

まずは、「BUTTER」に関して。

本作の内容なんですが、2007年に起こった首都圏連続不審死事件がモチーフにされている一冊だそう。
そうとも知らず、「3冠獲得!」という帯に惹かれ購入しました。

あらすじですが、以下のようなもの。(Google Geminiより)

連続不審死事件の容疑者である梶井真奈子(カジマナ)に魅せられていく週刊誌記者の町田里佳の心理変化と、社会の闇を描いた社会派小説

本書が、「おもしろい」と思えた点が2つ。
1つは、主人公(?)町田里佳の心理変化、もう1つは書籍内の「女性」の書き方。

町田里佳の置かれた環境、そして心理変化が自分と重なる部分があったんですね。
記者である町田里佳と、自分とでは仕事は違うものの、記者が激務であることは読み取れました。

そしてそれは自分も同じで、やっぱり激務。
当方アラサーということもあって、入社1~3年目の新人というポジションではありません。様々なタスクが降ってきます。

そんな町田里佳の激務に加え、彼女の恋人、誠との描写にも頷けました。
アラサーになって結婚する人が増えることもあって、仕事にプライベート大忙し。

「あー、そうそう。」って共感だらけ。
欲望に忠実になっていく主人公の変化を、どこか自分も欲しているのかもしれませんね。

次に、本作の「女性」の書き方に関して。

今作が海外で注目されているのは、おそらくここがポイントなのではないかと思っています
つまり、女性の置かれた立場です。

これは自身の関心のなさなのか、もしくは偏見なのか、男性は女性ほど外見に気を遣わないと思っています。
極端な例かもしれませんが、男性は化粧をしませんし、ぽよんとお腹が出ていてもとやかく言われません。

では、女性の場合は?
スッピンで仕事にプライベートに過ごす方がどれくらいいるでしょう?
髪の毛ボサボサで外出する方がどれくらいいるでしょう?

こういった社会からの無言の圧があるようです。
「女性はこうあるべきだ」みたいな。
書籍内の登場人物である、「カジマナ」は言葉を選ばず言えば、「見た目がよくない」。
ただ、自分自身がその「見た目がよくない」と思っている時点で、「女性がこうあるべきだ」と勝手に決めつけてしまっているのも事実。

女性の抱える「ルッキズム」に着目した作品と言えます。

ババヤガの夜

次に、「ババヤガの夜」。

世界最高峰のミステリー賞受賞とあって、ミステリー要素がてんこ盛りと思えば、そうではなかったですね。
むしろ、ヒューマンドラマのような要素が多いように感じました。

ババヤガの夜のあらすじは、ざっくりと以下です。(Google Geminiより引用)

暴力を趣味とする混血の女性「新道依子」が、ヤクザの会長の一人娘の護衛を務めることになり、その「お嬢様」との交流や裏社会の出来事を通して成長する物語です

こういうあらすじということもあり、めちゃくちゃ暴力シーンがあります。
そして、その描写がリアル。作者も武道や格闘技の経験者かもしれません。

そのシーンが鮮明に頭の中で描かれます。
とてもグロテスク。
ただ不思議なことに、ページを捲る手が止まらない。

で、その結果ミステリー要素が含まれる文章もすっ飛ばしてしまい、再読。
なるほど、ミスリードがちらほら。やられた。

なぜ今作が?

2冊を読了し、
素朴な疑問がポンッと浮かびました。

なぜこの2冊がこうも注目されているのか?
僕の推測ですがその答えは、社会問題を取り上げているから、ですね。

映画の場合がよりわかりやすいでしょうか。
例えば、2019年アカデミー賞受賞作「グリーン・ブック」や、2020年同賞受賞の「半地下の家族」など。

2019年、MARVELが好きな自分にとって、黒人スタッフのみでキャスティングを行った「ブラックパンサー」や興行収入で1位となった「アベンジャーズ」に期待していたものの、アカデミー作品賞は「グリーン・ブック」に。

ただ、「グリーン・ブック」はめちゃくちゃメッセージ性があり、事実に基づいたアメリカの歴史を描いています。
また、半地下の家族内の設定もてっきりフィクションかと思っていたら、ノンフィクション。

作品のネタバレになりますが、暗く、貧乏な半地下に住む家庭と、高台の豪華な家族との対比が美しく、また同時に残酷だと感じました。

先述したように、この2冊内で特徴的に描かれるのが、「女性像」です。

女性はこうあるべき、みたいな固定観念・ジェンダー像に疑問符。
そして、「ババヤガの夜」においても、主人公の新道がヤクザの一人娘、尚子を護衛するという「女性×女性」で話が進みます。

また同時に、今作では「日本っぽさ」が書かれているのも外国から共感を得たポイントかもしれません。
深夜にラーメンに立ち寄る、そんなシーンに好印象を得る、といったコメントも見かけました。

これが2025年現在の社会で蔓延する問題なんだ、と読み取れた作品でした。

さいごに

以上、「BUTTER」「ババヤガの夜」のレビューをまとめました。

小説家がすごいと思うのは、文字で人を魅了する箇所。
食事のシーン、暴力のシーン、街を、人を、風景を描写する言葉選びに舌を巻きます。

世界が評価した2冊をご堪能ください。

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