はじめに
続々とMLB移籍が決まってきました。
10月22日に巨人の岡本選手が、11月5日に西武の高橋選手が、
11月8日にヤクルトの村上選手が、そして、11月10日に西武の今井選手が
ポスティング制度を利用して、メジャーリーグに挑戦することを各球団が正式に発表しました。
もちろん、MLB球団が獲得を正式に発表するまでは分かりませんが、
同一シーズンで4選手が同時に海を渡るのは、過去最多ではないでしょうか?
それだけ今日本人選手の間で、「MLB」が遥か彼方の夢の舞台だったものから、
比較的身近に、また以前にもまして魅力的に写って来ているのでしょう。
そして、そこに拍車をかけたのはドジャース在籍の大谷選手であることは間違いないでしょう。
2023年のWBCで大谷選手と共闘した侍選手たち。
MLBの一戦で活躍する選手たちと対峙したことで、少なからず日本だけでは感じ得ない高揚感があったことでしょう。
現役メジャーリーガーのスーパースター、マイクトラウト選手を三振に奪った中日の高橋選手は一生忘れられない高揚感を覚えたはずです。
そんなMLBという野球の頂点に挑む4選手の移籍動向をまとめます。
MLBとNPB
まず、そもそもMLBという場所をちょろっとご紹介。
大袈裟な言い方ですが、
全世界の野球選手が、アメリカのMLBでの活躍を夢見て、日々鍛錬しています。
自分なんて、とMLBを目指す予定のなかった選手も自国で圧倒的成績を残せば、より高みを目指すのはごく自然なことでしょう。
そしてその高み、つまり世界中の野球の頂点がMLBとされていますね。
選手の実力はもちろん、ビジネス的観点しかり、規模感しかりです。
プロ野球が全国のエースで4番が集まるように、
MLBには、世界のエースで4番が集まるわけです。争いが激しいのは言うまでもありません。
では、MLBとNPBの違いを簡単にまとめてみます。
年俸
こちらの記事によれば、
2022年度のNPBの平均年俸が約4,000万円であるのに対し、MLBは441万ドル(5億円)と、その差は約13 倍あります。
桁が一つ違い、まさに次元が違うと言っていいでしょう。
なぜここまで違いが生まれるかといえば、ビジネス面の違いです。
例えば、日本には親会社がいて、事業の一角としてプロ野球に参画していますね。
ソフトバンクグループの事業の一つに、ホークスがあるように。
一方、MLBは独立しており、投資家が球団を所有していることが珍しくありません。
そしてMLB機構が全体を管理しているものの、各球団が放映権、グッズ、ライセンス(球団の名前など)で、その球団の価値を上げるよう、球団の外でも積極的ビジネスがされているよう。
12球団が個別にビジネス展開がされている一方で、
MLBはMLB機構が各メディアに球団の放映権やグッズという形でマネーを発生させている。
仮に球団のどこかが自社の売り込みが下手な場合、外からのマネーは少ないなんてことザラでしょうね。
平均球速
次はもっと選手目線。平均球速です。
こちらの記事によれば、
日本の投手の平均球速は2024年時点で、146キロ。
2014年が141キロだったことを考えると、10年間で5キロアップしていることが分かります。

確かに、一時は150キロを計測すると、観客席がややざわついていましたが今は違いますね。
なぜなら160キロを計測する選手が決して珍しくなくなったからです。
それも、近年の科学に基づいた選手の筋力アップが関係しているのでしょうか。
一方のMLB。
同じく、2014年の平均球速が149キロ、2024年の平均球速が151キロだったそう。
当たり前ですが、変化球込みです。
NPBに比べ微増ですが、平均が150キロを超えているそうです。。
大谷選手や山本選手、佐々木選手も直球が160キロ近い球を常に投げるわけですから、
打者は150キロの直球にはすでに目が慣れているのでしょう。
つまり、150キロの球を投げられる、は武器ではなく、標準装備なのかもしれません。
野球環境
違いはいくつもあるでしょうが、最後に野球環境に関して。
ここが最も選手に影響するかもしれません。
言語、国内の時差、食習慣、ボール、試合数、移動距離、選手にかかる外的ストレスはかなり多いように思います。
故に、ダルビッシュ選手や大谷選手はさすが、と思わせる自己管理方法を徹底しているのかもしれません。
自身の調子が崩れる要素があまりにも多いからです。
また、特に内野手である村上選手と岡本選手にとって、天然芝への適応も求められます。
MLB球場のほとんどが管理が簡単な人工芝ではなく、天然芝を利用しています。
パワーヒッターが多いことに加え、天然芝による不規則な打球処理。
日本人野手が過去苦労していたことに直面するのは間違いありません。
以上、かなり長くなりましたが、NPBとMLBの違いをざっくりまとめました。
では本題です。
各選手の移籍動向に移りましょう。
MLB移籍野手編:村上選手・岡本選手
まずは、野手から。
村上選手、岡本選手ともに、持ち味はパワーでしょう。
村上選手がNPB在籍8年で計246本、岡本選手がNPB在籍11年でこちらも計246本の本塁打を記録してきた。
村上選手が史上最年少で三冠王を達成し、
岡本選手は6年連続30本塁打、かつゴールドクラブ賞3度と攻守に良い戦力となり得る。
村上選手が25歳、岡本選手が29歳と決して衰えが気になる年齢ではない。
むしろここから油が乗ってくる時期である。
村上選手・岡本選手の課題
次に2選手の課題に関して。これは超個人的な考えです。
まず、村上選手ですが三振の多さに関して。
MLB公式でも村上の弱点という記事があるほど。
三冠王を獲得した彼の打撃とその若さはやはり魅力的なようで、
どこのチームに行こうと、しばらくはチームの柱としての活躍が期待されています。
ただ、三振の多さ、もっというとコンタクトの悪さをMLBは懸念しているようです。
2025年は、空振り率が36.7%、三振率が28.6%だったそう。
さらにストライクゾーンのコンタクト率も低い。
MLB平均のストレイクゾーンのコンタクト率が82.5%であるのに対し、
村上選手はNPBでストライクゾーンのコンタクト率が72.6%と低く、MLB移籍した日本人野手は悪化傾向にあるようです。
また左投手の変化球であったり、右投手の緩急系に弱いことを踏まえ、MLBはビシッと村上選手の課題を指摘します。
「平均球速が速く、鋭い変化球が多用されるMLBでは不利になる可能性がある」、と。
守備・走塁にもやや懸念がされていることを考えると、一塁かDHでの起用がメインとなるでしょう。
次に、岡本選手の課題は守備です。
驚くことに、
FAランキングでは村上選手が上であるのに対し、岡本選手は全球団が欲しいと思う選手だそうです。
その理由は、その打撃での貢献だけでなく、守備面や走塁面も加味しているから。
ただ、岡本選手がゴールドグラブ賞3度の実績がありながらも守備面は依然懸念されます。
下2つの動画にて共通して言われるのが、肩の強さ。
プロの第一線で活躍されてきた3人が言う、「肩の強さ」を岡本選手が持っているのか。
厳しい言い方をすれば、その肩が無ければ守備面での活躍には黄色信号が点ってしまうことを意味します。
ただ、鈴木誠也選手が渡米4年目で日本人右打者本塁打数の記録を更新したように、
数をこなすことで結果につながることを証明しています。
村上選手、岡本選手ともに課題の克服に励むことでしょう。
MLB移籍投手編:今井選手、高橋選手
次に、投手編。
個人的に、今井選手はある程度の活躍はできると思っています。
もちろん、最初は環境の変化に苦労するでしょうが、それでも活躍はほぼ約束されているでしょう。
なぜなら、今シーズンの活躍を見てもわかるように、圧倒的だからです。
サイ・ヤング賞は日本ハムの伊藤選手が受賞したものの、
今井選手以上に、圧倒していた印象です。
下の記事でもまとめていますが、
WHIPと言って、1イニングあたりに許した走者の数を表す指標で2025年は、0.89を記録。
そしてこれは、山本由伸選手が沢村賞を受賞した2021~2023年と肩を並べているんです。

27歳で、右の本格派。
チームによっては、先発1~2番目あたりに食い込む力があるはずです。
事実、その力量とFA史上の右の先発投手不足状況から、300億円越えの契約の可能性もあるようです。
一方の高橋投手ですが、あまり注目度は高くないようで。。。。
0勝11敗に終わった昨シーズンはまだ記憶に新しく、今シーズンも8勝と巻き返したものの、148投球回で88奪三振。技巧派がMLBで通ずるかは不透明。
救援での起用の可能性もあるそうです。
今井選手・高橋選手の課題
では、2選手の課題に関して。
今井選手は、球数の多さと四球の多さが気がかりです。
8年のキャリアで、与四球王に3度輝くという不名誉な記録があります。

よく言われる通り、
MLBでは中4日の先発感覚で、先発投手は、クオリティスタート(以下QS)を達成すれば先発投手として合格、のような風潮があります。
QSとは、6イニング以上3失点以内にまとめること。
なおかつ、もっと欲を言うと、球数は100球前後で試合作りをすることも求められます。
今井選手がパワーピッチャーであるため、球数が多くなるのには頷ける一方で
シーズンを通して活躍するために最も求められるのはイニング数でしょう。
そのイニング数を稼ぐためには、省エネ投球が求められます。
すでにヤンキースが今井選手の獲得に乗り出すと報道されていて、
カブスやパドレスも先発投手の補強が最優先とされており、今井選手への注目が集まるばかり。
高橋投手は、動く球の習得、もしくは制度向上が求められるでしょう。
救援も示唆されているものの、
ロングリリーフが可能な投手は貴重です。
MLBに移籍したからといって、急に奪三振率が向上することもないでしょうから、
いかに打者を抑えるか、ここに注目されます。
故に、打者を打ち取る術、引き出しを増やし、防御率3.00~4.00にまとめられれば合格でしょう。
さいごに
以上、今シーズンオフにMLB移籍を目指す選手の動向をまとめました。
MLBファンにとって、日本人が世界で活躍する姿に勇気をもらいます。
山本選手がWSでMVPを受賞し、日本人投手への注目は高いでしょう。
大谷選手や山本選手の後を追うように、活躍してくれるといいですね。

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