はじめに
この記事を書いている10/16、野球ファンにとっては、衝撃の、もしくは「やっぱりか」と頷くニュースが飛び込んできました。
それが、西武埼玉ライオンズ在籍、今井達也選手が今シーズンオフにMLB移籍に向け球団と話をした、というもの。
個人的には、衝撃というよりも、「やっぱりか」という印象。
それほど、今シーズンの今井選手の活躍は目を見張るものがありました。
ただ、驚いたのも事実です。
なぜなら、今井選手はメディアに大々的にMLB移籍の話をしていなかったため。
チームメイトの高橋選手やヤクルトの村上選手は常々MLB移籍を口にしていました。
今シーズンの活躍は十分な成績であるものの、「え!今シーズンオフ!?」と急だったのは確かです。
そこでこの記事では、今井選手のMLB移籍(仮)に先駆け、日本での成績をまとめてみます。
個人的には今井選手の移籍には納得いくものの、その壁となることが2点あると思っているんですね。
今井選手の成績
まずは今シーズンの成績を振り返ってみましょう。
2025年成績
勝利数:10
敗戦数:5
完投数:5
完封数:3
投球回数:163.2
防御率:1.92
奪三振数:178
奪三振率:9.79
四球数:45
K/BB:3.96
WHIP:0.89
次に通算成績を見てみましょう。
通算成績
勝利数:58
敗戦数:45
完投数:14
完封数:7
投球回数:963.2
防御率:3.15
奪三振率:8.47
K/BB:1.96
WHIP:1.27
勝利数/敗戦数が打者の援護に左右されるため、投手本来の力量を図る上では防御率とWHIPが重要な指標だと個人的には考えています。
その上で、WHIPが1.27は優秀な数字でしょう。
今シーズンに限っていうと、1点代を下回っています。
WHIPとは、その投手が1イニングあたりに被安打、四死球などで許した走者の数を指します。
つまり、今シーズンの0.89は、平均して1人以下の走者しか許していないことを意味しており、これはかなり優秀な値です。
通算でも1.27と、1人弱しか許していないことを指します。
これもかなり個人的な見解になりますが、
日本人投手がMLB移籍する際にWHIPが1点代を下回っていると概ね活躍はできると思っています。
参考までにMLBで先発として活躍されている選手のNPB在籍時のWHIPをご紹介しましょう。
山本由伸選手:0.94 MLB:1.03
大谷翔平選手:1.04 MLB:1.04
ダルビッシュ有選手:0.98 MLB:1.14
菊池雄星選手:1.17 MLB:1.36
千賀滉大選手:1.11 MLB:1.20
今永昇太選手:1.12 MLB:1.02
菅野智之選手:1.03 MLB:1.33
こうして比べると、現在MLBで活躍されている選手達がいかに日本で支配的投球をしていたかが分かります。
そして、いかに日本人選手が異国の地で奮闘しているかが見て取れるんですね。
こうして比較すると、今井選手のWHIP通算成績1.27は見劣りしてしまいます。
ただ、今井選手が「覚醒した」のはここ2年ほどのこと。
特に今シーズンは投球フォームの改善が功を奏し、WHIP0.89は山本由伸選手が沢村賞を受賞した2021~2023年と肩を並べます(2021年からそれぞれ0.85、0.93、0.88)。
そして、MLBスカウトの目に留まった、という流れでしょう。
かつての山本選手がそうだったように、敵なし状態にあります。
今井選手MLB移籍の障壁① チーム事情
成績だけ見ると、今井選手はMLBでも活躍できると思っています。
もちろん、移籍となると生活環境、野球かベースボールかの違いへの適応など活躍するために様々要素が絡み合っているのは事実です。
ただ、それ以外にも今後今井選手が直面するであろう障壁が2つあるのでは、と推測しています。
それが、チーム事情と先発投手としての役割です。
順番に解説します。
まず、チーム事情に関して。
結論、現在在籍している西武埼玉ライオンズが移籍を良しとするかが不透明であるということ。
過去、西武埼玉ライオンズに在籍していた菊池選手がポスティング制度を利用して海を渡りました。
チームとして選手の背中を押してくれる姿勢があるのでしょうが、
今井選手とチームメイトの高橋光成選手もMLB移籍を希望しています。
仮に両名が移籍となった場合、チームの絶対的エース2枚看板両名を失うことに繋がります。
そしてそれはリーグ優勝、日本一から遠ざかることを意味しており、
そのチーム事情からMLB移籍を快諾できない状況にあるんですね。
今井選手MLB移籍の障壁② 先発投手としての役割・球数
次に、先発投手としての役割に関して。
「野球」と「ベースボール」の違いがあるにせよ、
依然NPBが多くの点でMLBを参考にするのは間違いありません。
例えば、今では当たり前となっている「データ野球」。科学、データに基づき戦略を練ったり、トレーニングをしたりといったことが珍しくありません、。
このように各選手の活躍がデータベースで判断されており、そこを参考にNPB選手がMLB移籍を匂わせるのでしょう。
では、MLBで先発投手にどういったことが求められるかと言えば、
イニングを投げることと、クオリティスタート(以下QS)の達成です。
NPBとMLBとでは、やや仕組みが違うと言えど、選手登録できる人数が異なり、
NPBが29人であるのに対し、MLBが26人というルールがあります。
MLBの方が試合数や移動距離の多さがあるにも関わらず、登録できる選手は少ないんですね。
つまり、選手1人1人がチームの求める役割をしっかりと果たす必要があります。
繰り返しになりますが、
先発投手としてQSを達成し、イニングを稼いでもらうことが期待されます。
QSとは、6イニング以上投げ、尚且つ失点が3点以下であること。
その上位が、ハイクオリティスタート(HQS)と呼ばれ、
HQSは、7イニング以上投げ、失点が2点以下であることを指します。
今シーズン今選手のQS率は、66.7%
つまり先発した試合の約7割がQS達成ということです。
山本由伸選手の今シーズンのQSが60%だったことを考えれば、とても優れた数字です。
MLBのQS率1位は、68.8%でした。
ただ、このQSを妨げる要因が球数です。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、だいたい100球前後で投手交代されることが多いんですね。
今井選手はダルビッシュ有選手に近しいものがあると思っているのですが、
ダルビッシュ有選手のNPB在籍時の与四球率は、2.3%。
つまり1試合で平均して、2個の四球しか許さなかったことを意味します。
ところが、MLB移籍1年目、4.1%まで悪化しました。
四球が増えれば、球数が増え、結果QS達成を阻むことに繋がります。
あれだけ支配的投球をしていたダルビッシュ選手が、
四球率はもちろん、防御率など軒並み悪化しており、近いタイプの今井選手も同じ道を辿る可能性が高いと見ています。
さいごに
以上、MLB移籍を狙う今井選手の成績をまとめ、ML移籍に伴う障壁もまとめました。
今シーズンの成績と各数字を見れば、今井選手がMLBでも活躍できる可能性は十分にあります。
ただ、それに伴う壁にもぶち当たるでしょう。
とはいえ、移籍するのであれば選手として1年でも若いうちに移籍した方がいい。
そしてそれはチームも知っているはずです。
さあ、今井選手は2026年どこで開幕を迎えるのでしょうか。
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