論理と直感、理性と感性 | 世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか

世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか 本-Book-

はじめに

山口周さん著、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』のレビューです。

本屋さんで「注目!」のコーナーにあったので手に取ってみた。

後ほど知ったことだが、初版が2017年のもので、8年前である。

それがロングセラーとなっているのは、本書の内容が2025年になってより説得力を増しているからだろうか。

事実、本書の内容はとても興味深いものだった。

個人的に「なるほど」とブッ刺さった箇所をまとめる。

論理と直感

勝ちに不思議の価値あり、負けに不思議の負けなし

本書の序盤でこの言葉に関して説明がなされている。

論理では説明ができない、故に不思議。僕は野球を見るため野球を例にとってみよう。

この記事を書いている前日に、不思議な勝利があった。↓

MLBでは点差が大きく離れた試合では、投手の体力消耗を避けるため、野手が登板することが決して珍しくない。

この日の試合、ドジャースが15点差をつけており、捕手のジョニー・ペレダ選手が大谷選手と対戦。勝負の結果は大谷選手の空振り三振

この対決はジョニー・ペレダ選手の勝利となったが、まさに不思議だ。

普段から150kmを超える豪速球を投げる投手と戦っている大谷選手が、「打ちごろ」の球を投げる「野手」の相手に三振を喫したわけだ。

なぜジョニー・ペレダ選手が大谷選手との対決に勝てたのか。

論理的に説明できるだろうか。

一方で勝負に負けた大谷選手が負けた理由は、いくつかある。ボール球に手を出したから、もその一つだ。

話をもっと身近な仕事に移してみよう。

論理性というものが、少なからず多くの仕事でも求められる。

外資系企業に勤める僕もその一人で、「数字を用いて〜」「ドキュメント提出には、論理的に〜」などが当たり前。

なぜなら、その方が具体性が増す。

「熱が出たので休む」と「38°の熱が出たので休む」の場合、後者の方が具体が増すでしょう?

そのため、「直感」や「感覚」などのフワッとしたこと状態は説得力がないと言っても過言ではない。

ところが、この本の面白いところは、著者が企業経営の意思決定が、「論理」に偏りすぎている、と指摘している点だ。

ページを捲る手が早くなった。

本書で紹介されていたのが、SONYのウォークマン。

「機内で音楽を聴けるプレーヤーが欲しい」となった際、市場調査や綿密なマーケティングのようなTHE論理的、もしくは合理的に開発がなされなかった。

「おお、いいですね」、この一言で決まったようだ

論理的に準備をしていたら、このスピード感は生まれないはずだ。

重要視された論理、軽視された直感

メーカー勤務ではないため、詳細はわからないが、新商品を作るとする。

となると、マーケティングチームの腕の見せ所がやってくるのだろうか?

つまり、市場調査はもちろん、ターゲットの選定などを重要視し、「〜だから〜なる」と合理的に事を進めるのだろうか。

過去の日本企業はまさにそれを重要視したようだ。

スピードコスト、この2つが日本企業の強みだったと本書に書かれている。

つまり、お手頃の値段のものをスピーディーに提供することで「強い日本」を築いたわけだ。日本車が世界で支援されたのもこういう背景があったからだろう。

ただ、中国を筆頭に、諸国がリーズナブルな価格でスピーディに、なおかつ大量にモノを作れるようになったため、日本の優位性が失われた。

そう、論理と理性はパクれるのだ。

日本は追いつかれた。

わざわざ日本製のモノが選ばれる理由がなくなり国際競争力が失われてきた。

しかしながら、いまだに日本はレッドオーシャンで戦い続けている、と。なるほど。

では、レッドオーシャンの中で周りと差をつけたらいい。どうやって差別化するか。

そう、「感性」の出番だ。

感性の可能性

感性とは何か、というと、「なんかいい」という感覚のことだ。

やっぱりふわふわしている。

プレゼンする時に、「なんかいいからこうしました」なんて言おうもんなら即却下されるだろう。こういう感性の使い方はNGだ。

問題なのは、「論理」に重きが置かれすぎていることだ。

論理一辺倒だったところから、感性を組み込め、ということなのではないだろうか。

では、感性が組み込まれたモノはなんだろう。

本書で度々紹介されるのがAppleだ。頷ける。

「スタバでPCカタカタ」と聞いた際に、そのPCがなんとなくMacBookが連想される。自分だけだろうか。。。

ただ、そのPCがApple社製のものと、他社製のモノだった場合、どちらに箔がついているだろう?

僕はその答えが、差別化、つまり感性、もっというとデザインの力だと思っている。

ユーザーを気持ちよくする、それこそが「なんかいい」、つまり感性の力だ。

では、他の「なんかいい」モノはなんだろう、本書では度々Appleが出てきたが他にもあるはず。そしてその答えがすぐに浮かんだ。

BALMUDAである。

これまで実家で、また一人暮らしを始めてから家電はPanasonic製のモノばかりだった。Panasonicは日本の隆盛を築いた企業の一つ。

機能性、耐久性に優れているのは間違いない。

では、感性は?「なんかいい」は?個人的には弱い。

反対に、BALMUDAは機能性は分からないが、「なんかいい」。

例えば、いくつかの企業が販売しているトースターを5個並べるとする。

いずれも温めるという機能があるのはもちろんだが、どうやって差別化するのか。

感性だろう。

持っているだけで気持ちよくなる「なんかいい」が差別化のポイントなのだろう。

論理を90%大事にしていたところを、論理50%、感性50%にシフトしたら可能性があるじゃないか、と思ってしまう。

さいごに

以上、山口周さん著、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』をレビューした。

かなり面白い本で、レビューと言いながら私的意見がガンガン入ってしまった。

面白い本である。

8年の時を経て、再注目(?)されているのも納得だ。

何かと色々な情報やモノがあるからこそ、選択肢が多すぎる。

だからこそ、「なんかいい」が武器になり、差別化の鍵となるのだろう。

一読してみてはどうだろう。

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